Yokohama Choral Society
-横浜合唱協会-

1997年ドイツ旅行 報道まとめ

1997年8月、横浜合唱協会はドイツのタールビュルゲル音楽祭に出演。この時のコンサートの前後、地元の新聞に出たコンサートに対する案内・講評等です。和訳したものを載せました。

1997年第1回ドイツ旅行概要はこちらです。

(Web管理者)

1997年8月11日付OTZ文化欄

<<タールビュルゲルに日本がやってくる>>

横浜合唱協会が8月16日土曜日20時にクロースター教会演奏会シリーズの中でモテットおよびドイツと日本の作曲家の作品を演奏する。八尋和美氏の指導の下でJ.S.バッハやF.メンデルスゾーン、林光、宮城道夫、そして間宮芳生の作品が紹介される。ピアノは谷口明子氏。またピアノ演奏ではチターのような伝統的和楽器「琴」の作品がプログラムに予定されている。

1997年8月13日付OTZ文化欄

<<クロースター教会に日本の合唱団>>

タールビュルゲル/クロースター教会において8月16日土曜日20時に行われる演奏会は誰にも特別な体験となることであろう。日本から横浜合唱協会が来独、日本とドイツの作曲家の作品を選りすぐって演奏する。チケットはクロースター教会事務所(電話/ファックス036692-22739)、イエナインフォーメーションセンター及び当日売りの窓口にて。

1997年8月13日付AA

<<クロースター教会に日本の合唱団>>

Nippon goes Thuringia(日本がチューリンゲンにやってくる):日の登る国が今回はハイテクの国としてではなくタールビュルゲル/クロースター教会における演奏会の形で紹介される。なんとも魅力のあるもので、それも詳しいバイリンガルな取り扱い説明書付き。これは横浜合唱協会がこの8月16日20時の演奏会のために日本で印刷したプログラムを持参するからで、すでに横浜での同じ内容の演奏会にも使用されている。日本の演奏会ではきっと表紙のロマネスク様式のバジリカがエキゾチックな印象を与えたであろうが、しかしバッハの"Singet dem Herrn ein neues Lied" で演奏会が始まった時にきっとドイツの聴衆との世界を一つにする一体感を感じさせたに違いない。チケットはクロースター教会事務所(電話/ファックス036692-22739)、イエナインフォーメーションセンター及び当日売りの窓口にて。

1997年8月13日付OTZ地域欄

<<日本の合唱団がタールビュルゲル/クロースター教会で演奏会>>

8月16日土曜日20時から

来る8月16日土曜日20時から日本から横浜合唱協会が来独、タールビュルゲル/クロースター教会で客演する。今回の演奏会のプログラムはすでに日本で印刷され、横浜での同内容の演奏会に用いられたものを持参。

プログラムの表紙にはクロースター教会のロマネスク様式のバジリカが使われており、日本の聴衆にとっては異国情緒のあふれるものであったに違いない。しかし演奏会冒頭に歌われるバッハの"Singet dem Herrn ein neus Lied" はドイツの聴衆との一体感を生み出したであろう。谷口明子氏のピアノによるメンデルスゾーンの「無言歌」を橋渡しとして、プログラムは八尋和美氏の指揮の下、メンデルスゾーンの"Warum toben die Heiden" へと進んでゆく。プログラムの第2部では現代の日本人作曲家の作品が紹介される。林光の編曲による「日本抒情曲集」、そしてピアノ演奏の後、間宮芳生の「コンポジション I」。ソリストはソプラノの木島千夏とバリトンの森一夫。

この演奏会をお聴きのがしなく。チケットはクロースター教会事務所(電話/ファックス036692-22739)、イエナインフォーメーションセンター及び当日売りの窓口にて。

1997年8月16日付OTZ (写真の解説)

<<日本の合唱団がタールビュルゲル/クロースター教会で歌う>>

横浜合唱協会は今日の夜タールビュルゲル/クロースター教会第25回夏の音楽祭でバッハ、メンデルスゾーン、日本人作曲家の抒情曲集などを演奏する予定。横浜やその近郊に住むバッハ愛好者からなるこの合唱団には30年近い歴史があるが、海外での演奏会は初めてである。指揮者の八尋和美氏とトーマスカントルであるビラー氏及び現在タールビュルゲル在住の元トマーナーとの長い友好関係によりこの演奏会が実現。

1997年8月16日付OTZ

<<日本から来たバッハ愛好者達がお国の抒情曲も披露>>

横浜合唱協会、初の海外演奏会

横浜合唱協会は今日20時から43回目の演奏会をクロースター教会第25回夏の音楽祭において行う。この合唱団にとっては初めての海外演奏会であり、通常とは異なりバッハなどドイツの偉大な作曲家達の作品ばかりでなく、日本の作品もプログラムに取り入れている。「これは私たちにとって本当に初めての事です。」とメンバーの一人が語ってくれた。合唱団のメンバーにはプライベートに西ドイツや東ドイツを訪問したりそこで学んだ人もいるが、指揮者の八尋和美先生もピアニストの谷口明子先生も同様である。同内容の演奏会はすでに一度7月3日に横浜で行われており、従って本日のプログラムも2か国語で印刷されている。プログラムには八尋和美氏とトーマスカントルのビラー氏とのつながりからこのドイツ演奏旅行に至るまでの経緯も記されている。

この合唱団がタールビュルゲル/クロースター教会での演奏会を行う事になったきっかけは、ビュルゲル教会区演奏会主催事務局のメンバーであるハーゲン氏の力によるところが大きい。ハーゲン氏は八尋氏御家族の滞在先に自宅を提供。また合唱団の69人のメンバーの中にも家族連れもあるが、ほとんどの人達がエールミューレ、5組がタールビュルゲル及びビュルゲルでのホームステイ、他はイエナに宿泊している。「私たちは大変満足しています。」という事である。合唱団はすでに8月8日にライプツィッヒに到着し、10日の日曜日にトーマスカントルの指導の下、朝と夕方の礼拝で歌っている。その後はオプショナルツアーなどでマイセン、ドレースデン、ベルリン、アイゼナッハ、ワイマール、ケーテンといった町を訪問、一昨日ビュルゲルに到着。すでにここの陶器博物館を見た人もいるようだ。

「ここでバッハを歌う事ができて、私たちはとても誇りに感じています。2000年までの演奏計画がありますが、もう一度ドイツへ来たいとみんな言っています。」

この素敵な出会いを逃したくないあなたには、どうぞ当日売りのチケットもあります。

(写真の解説)

今夜横浜合唱協会がタールビュルゲル/クロースター教会で歌う。(写真は昨日のリハーサル風景より。) 若いメンバーは20歳前後、中山さんが72歳で最年長。日本の作品を視覚的にも豊かに表現するために伝統的な法被を着て登場する予定。

1997年8月18日付

<<大臣が来賓としてタールビュルゲルの音楽祭に>>

スシャール大臣はこの音楽祭を高く評価

先の土曜日、横浜合唱協会が初めての海外公演をタールビュルゲルクロースター教会で行った。この演奏会には来賓として、チューリンゲン州の科学、研究、及び文化省大臣Dr.ゲルド=スシャール(SPD)が訪れ、ヴィンフリード シュタンケ市長に歓迎された。ここの教区の音楽祭主催代表クリスティーネ フライガングはタールビュルゲル音楽祭に対して定例的に資金援助が州予算から行われている事についてスシャール大臣と文化省に感謝の意を表明した。大臣はそのことについて「私たちが後援できる演奏会には限りがあります。ここの音楽祭のレベルの高さは私たちの期待以上のものがあります。」と答えている。州予算から年間4万マルクがこの夏の音楽祭に計上されているが、「予算に準じて」今後もこの資金的援助は続けられるであろうとスシャール大臣は語った。また大臣はクロースター教会愛好者の会の代表に新しく就任したマルティン=ツンデル氏に「この演奏会の今後を期待している」と話している。スシャール大臣も個人的に20年以上も前からの愛好者の会(会員数約130人)のメンバーであり、年に1、2回タールビュルゲルの演奏会を聴いているそうである。次の予定は8月23日のMDR(中部ドイツ放送局)の演奏会という事である。

1997年8月18日付OTZ

<<教会音楽とキモノ>>

横浜合唱協会が土曜日の夜タールビュルゲルで客演

クロースター教会にキモノ! タールビュルゲルの第25回夏の音楽祭を飾る著名な合唱団の中では先日の土曜日に登場したこの横浜合唱協会はとりわけ光っていたに違いない。アンサンブルの醸し出す音楽に異国情緒が漂っていたからだけでもなく、遠くの東の国の民謡を伝えようとしていたからだけでもない。異なった文化との出逢い、異なった世界との出逢いをより一層印象的にしたのはプログラムにもまた声楽的なスタイルにも現れている横浜合唱協会のロマン派を愛する気持に違いない。とは言え90人からなるこの合唱団は1970年の創立以来、ヨハン=ゼバスティアン=バッハを主にパレストリーナからブルックナーに至るまでの教会音楽だけを歌っている合唱団である。今回のプログラムにあるような自分の国の作曲家を扱うという事はまったくの初体験なのである。タールビュルゲルの演奏会に特別な雰囲気を、という特別な配慮か。しかしすべての音楽的表現の目的とする所にあるのがロマン派である。バッハの作品はその意味では1983年以来バッハとメンデルスゾーンが活躍した地であるライプツィッヒとの交流に一役買っている橋なのであろう。従ってまず始めにヨハン=ゼバスティアン=バッハの壮大なモテット"Singet dem Herrn ein neues Lied"。敬意そして芸術的評価。これは指揮者の八尋和美氏にとっても彼の合唱団の特色と素晴らしい面を発表する最初の機会であった。それぞれの声部の長いメリスマが無理なく空間に広がっていく。各声部のはっきりとした出だしがこの多声による音と響きの流れを前進させていく。発音も素晴らしく、テキストが音のうねりの中で指標となるあの"赤い糸"を紡いでいく。次のコラールとアリアは驚くほどに均質で響きも柔らかく感情が豊富。そして最終フーガは生き生きと輝いていた。この歌声は何かを伝えようとしている、人々への道を見つけようとしている!この解釈がまず表現の奥深さ、響きの美しさ、さらに雰囲気を中心に捉え、その重点を見失うことなく次のフェリックス=メンデルスゾーン=バルトルディーへとつないでいる。バッハに続いて演奏されたメンデルスゾーンの "Warum toben die Heiden" は交響楽的にさらに音楽を発展させ叙事的な表現を更に深め、非常に印象的。見事にこの合唱団は初期ロマン派の作曲家の没後150年を偲んでいる。谷口明子氏がかの有名な"無言歌"をピアノ演奏。谷口氏は感情と卓越した技量が混ざり合った独特な表現により確実に音楽を作り上げていた。それはいわば月並みなサロンコンサートと一線をなすものであった。

完璧なまでの間の取り方と演出が日本の作曲家の作品を取り上げた第2部を特色づけていた。また木島千夏氏と森一男氏のソロも非常に優れていた。林光編曲による作品では抒情歌曲あり、舟歌ありまた活発な子供の歌あり、と存分に楽しめた。宮城道夫の"春の海"では五音音階が日本の音色を表現。それにしてもメロディーや音の作り出す詩、ミニチュア版のような作品の中に100年前ニッポンに押し寄せ、民族音楽と融合したロマン派が鳴り響いていた。それは間宮芳生のコンポジションIの中で合唱の掛け合い、荒々しいソロ、物音のような響きそして騒々しいリズムにより形となって現れている。ここでは黒白の演奏会用の衣装ではなく色とりどりのキモノ!このような遊びのある、生命力あふれる、さらに時には芝居がかった演奏の喜びは民族音楽の新鮮さと力の中に限りなくあふれていた。それは聴衆を興奮させ最後まで息をのませるものがあり、まさに大喝采をおこさせたのである。

Dr.E.K.

1997年8月19日付

<<バッハも想像すらしなかったであろう>>

日本の合唱団が250年たった今バッハのモテットをドイツで歌う

おそらくバッハも250年前には想像できなかったであろう。7月にイエナで大阪のハインリッヒシュッツ合唱団が演奏会を行ったが、先日土曜日にはタールビュルゲルで横浜合唱協会がドイツの作品および日本の作曲家の作品を演奏した。アマチュアの合唱団としては非常に高い水準の合唱団であった。バッハの"Singet dem Herrn ein neues Lied" の解釈には驚くべきものがある。このアカペラの作品をイントネーションの美しさで響かせ、さらにバッハの作品には欠かせない透明性があふれていた。バッハのポリフォニックな考えはこの透明性によって形が見えてくるものである。八尋和美氏の指揮は暗譜で弾むように、また目的にかなった余分な動きのないものであった。その指揮によりバロック音楽の枝分かれしているメロディーラインが確実に引き出されて響いており、さらに細かいリズミカルな部分も正確に歌われていた。この合唱団のメンバーにはドイツ語が余り難しくなかったようで、一般的に海外の合唱団によくある、言葉を前面に押し出そうとするものが感じられなかった。

谷口明子氏が引き続いてメンデルスゾーンの"無言歌"を演奏。ここではもう少しロマンチックな、あふれるようなメロディーの流れを希望。休憩前に合唱団が、鳴り響くフォルテ、押さえたピアノでメンデルスゾーンのモテット"Warum toben die Heiden" を演奏。 線の細いソフトなソプラノの声が心地よい。

次のプログラムは日本の作品。林光の作品はヨーロッパのロマン派の影響が大きい作品であった。明らかに遠く東の国の作品である宮城道夫の"春の海"には谷口氏がエロティシズムの香りを漂わせて演奏。この演奏会の頂点は間宮の"コンポジションI"。独特な、恐らくほとんど失われてしまっている文化とその伝統を蘇らせるものがあり、この分野での今後を期待したい。古い日本のメロディーが田畑で働く農民の喜び、怒り、そして悲しみを表現し、子守り歌、さらには神々の文化までもが多彩な音楽となって鳴り響いていた。横浜合唱協会はこの2時間の演奏会で政治家達が何年かかっても成し遂げない事を実現してくれた。その合唱音楽によって国境を取り除いたのである。

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