Yokohama Choral Society
-横浜合唱協会-

2002年ドイツ旅行記念誌Web版第5章

演奏会 技術面からの振り返り

2002年 YCS演奏旅行  演奏の技術<総括>

堂崎 浩

今回の演奏旅行での特筆は、なんと言っても「追分節考」への挑戦である。YCSにとっては未知の分野であるだけに、戸惑いながらのスタートとなったが、八尋先生の適切なご指導と、森先生、太田先生、関先生のご協力によって本番は自信を持って演奏でき、大成功だったと思う。

そしてもう一つは、現地での本番を様々な残響空間で4回も持てた事。

この経験は技術向上面において大変プラスになった。特に残響が5秒もあるアンネン教会では、アンサンブルの精密さをいやおうなく要求され、普段の演奏がいかに荒削りであったかを痛感させられた。しかしその中でレーガーの評価が意外に高かった事は、練習で一番苦労をしてきた曲だけに大変嬉しく思う。一人一人がいつも以上に耳を凝らせて歌った結果レーガー特有の微妙なハーモニーの変化を初めて表現できたような気がする。この点は今後バッハを含めどんな曲を歌うときも必ず必要であり、普段の練習時から本番の緊張感をもって臨めば、もっと良いハーモニーが作れるはずだ。いずれにしても、ドイツでの貴重な経験を踏み台にして、更に5年後、10年後を目指してステップアップして行きたい。

8月10日(土) トーマス教会演奏会

山田 都

 実はトーマス教会で八尋先生の指揮で歌うのは初めて。前回は、全部ビラーさんだったから。

八尋先生の上がったテンションについていくのが楽しいなあ。練習中から教会内に観光客が沢山やってくるので嬉しい。人がいるとやる気がでてくる。しかし、トマーナの方々も聴きに来るらしいので困ったなぁ。ここでBachをやるのは大変だ。BachのLobetは最後まで不安の残るもの、大体出だしがイケない。緊張する上に、上がりきらないし勢いでやると、縦が合わなくなるし、気にしすぎると声が出なくなるし。(小心者が多いしね。) まだ最初じゃなければまだ良いのかな、イヤそれは言い訳でしかない。通奏低音が入るので少し安心したが、どうも楽器に張り合ってしまうらしい。(私には自覚がない・・) トーマス教会で歌えるので張り切って声が大きくなったのでは、とも思うが。と、ソプラノ中心のことしか思いつかない。

聖歌隊席は幅が狭いので、女性は3列男性は2列に固まって歌ったのでかなりいつもと違った。あまりいつも聞こえてこないパートが聞こえるのでビックリしつつ本当はこの位聞こえないとダメなのかとも思う。パートの声もまとまりやすいようだし、とにかく新鮮な気持ちで歌えた。

メンデルスゾーンは楽しかった。男声も本番になると豹変するなぁ。Sopだけじゃないよね。レーガーもいつもよりハモってたと思う。

でもDer Geistまで通してやると、体力気力共にギリギリの感じ。でもきっと慣れてないだけでみんなこの位出来ると思うけど、ね。

とにかく楽しかったなあ。

8月11日(日) トーマス教会での礼拝

大杉純子

5年前には礼拝の進み方そのものがわからず、讃美歌集を持ってハラハラドキドキしていた記憶があるが、今回は讃美歌の楽譜も一緒に印刷されたプログラムが配られ、また少しは様子がわかっていたこともあって、前回のような不安はあまり感じなかった。

ビラーさんによる練習は礼拝の前の45分間のみ、短い時間での緊張感に充ちたものとなった。まず、「歌うのはあなた方自身ですよ」ということをおっしゃられ、身が引き締まる。そしてレーガーの曲について、「ピアノからフォルテへのクレシェンドは大きく豊かに、フォルテ記号が4つ書いてあるようなつもりで。逆もまた同じ。身体の大きかったレーガーのように、その差が10倍にもなるように」と注意をいただいた。

礼拝本番。教会全体にオルガンが鳴り響き、前日に引き続いてオルガンとコントラバスつきで「Lobet 〜」を歌う。あのすばらしい空間で、軽やかに気持ちよく歌えた(と思いたい)。説教を挟んでビラーさん作曲の「Halleluja」、そしてレーガー、と進んだ。

レーガーの2曲はビラーさんの要求どおりにできたかどうかはわからないが、そうしようと努力することで、言葉と結びついたフォルテやピアノの必然性を強く感じた。「レーガーの作品とはこういう曲だったのか」と、身体で納得できた気がする。この感覚を大切に、忘れないでいたいと思った。また貴重な体験が積み重ねられた。

8月14日(水) Annabergでの演奏会

土井 賢一

Leipzigの快適な気候から、一気にAnnabergの冬のような寒さ。 また旅行出発時の緊張状態がほぐれて逆に疲れが出始めた頃。こういう中で、いかに自分をコントロールしてベストの演奏をするか、通常の演奏会とは違った演奏旅行ならではの難しさを感じた。

演奏会場もまた然りで、5秒以上も続くあのAnnen教会の残響。この中では、本当に芯が通って周囲と調和した楽声のみが残り、それ以外のもの(がなり、狂い)はすべて邪魔な音として空しく消されてゆく。この中で、合唱団員一人ひとりが、周りに頼ることなく、いかに自分の発声や音程をしっかり保ち、かつ響きの調和をとれるか、合唱団として一段上のレベルを要求される会場であった。先生から「この残響をうまく利用できると良いですね」と言われて、やっと落ち着いた演奏ができるようになったと思う。

演奏会では、この音響空間の特長を生かした遅めのテンポを使い、YCSならではの柔らかく伸びやかな響きをこのAnnen教会でも充分に聴衆に届ける事ができたと思う。惜しむらくは、全般的にその響きの持続力が不足で、隙間の多い演奏になってしまった点である。いかなるテンポにも柔軟に対応し、しっかり体を使って音の詰まったフレーズを作れるか、これも今後の課題であろう。しかしMax Regerの和音の色の移ろい、またモテット2番のポリフォニーの織り上げは、澄んだ女声パートの響きを中心に、きれいに仕上がっていたと思う。また白眉は、当地出身のBraeutigam氏作曲の「ハレルヤ」であろう。短い現代曲ながら、この古い教会の中で特に力強くかつ美しく響き、また合唱団の声が消えた後もこの独特の残響が、最も似合い生かされる曲であった。

8月17日(土) タールビュルゲルでの演奏

小野澤 誠

クロスター教会での追分節考は、曲と演奏とホールでの響きとが絶妙のバランスを保ちながら、時間と空間を超えて1点で交わったような、そんな不思議な感動を味わうことができました。

今回の演奏旅行のテーマは、各教会の響きと私たち合唱団の響きとが如何に溶け合うかだったと思います。クロスター教会はとても良い響きの教会ですが、歌いすぎると音楽を台無しにする危険性があります。

歌いすぎないように意識したためか、前半4曲はやや消極的な部分もあったと思います。特にpの時、声を小さくしただけでは、声がかすれたり音が下がってしまいます。強力な腹筋の支えによるブレスとfより強い精神エネルギーを持った『アクティブp』の技術を1人1人が体得していかなければならないと感じました。

こうした課題もありましたが、最後の追分節考はドイツ演奏旅行の総決算に値するとてもすばらしい演奏でした。曲と演奏とホールの響きが溶け合い、歌い手と聴く人の心が一致した瞬間でした。

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