Yokohama Choral Society
-横浜合唱協会-

2002年ドイツ旅行記念誌Web版第8章

新聞記事

ドイツの水害

鳥山 純一

これは、YCS がドイツを離れた8月18日付けの現地新聞にのったドレスデン市内住宅地の惨状です。今回の演奏旅行で、私達の印象に強く残ったことのひとつが、ヨーロッパで150年ぶりといわれた、この水害でした。これは、YCSがフランクフルト、ライプツィヒ空港に着いたときの、激しい雷雨で、ある程度は予見されたことでありましたが、その後、日本流にいえば、集中豪雨のために、予想外の被害が発生しました。

ヨーロッパ中部の大河エルベとドナウの流域が、特に影響が大きく、ドイツ国外でも、プラハやウィーンに被害が大きかったのですが、ドイツ国内では、ポーランド、チェコとの国境地帯に始まり、西北に国内を斜めに横断して、最後ハンブルクから北海に注ぐエルベ河と、その支流ムルデ川の沿いに被害が集中しました。被害の大きかった町として、新聞で報じられているのは、ドレスデンのほか、マイセン、グリマ、ビッターフェルト、リーザ、トルガウ、マグデブルクなど旧東ドイツの各地です。アンナベルクの近郊でも、一部被害があったのは、みなさんご覧になったとおりです。ドイツは、日本に比べて一般に平坦地が多く、水がなかなか引かないのも被害を大きくした一因でした。

新聞では、被害者の談として、これは、第2次大戦以来の惨事であるという報道もあります。また、家族をなくしたあとに、この水害で家、財産のすべてを失った64才の女性、10センチの泥に埋まった花屋さん、蔵書のほとんどをダメにした図書館の話などが

報じられています。復旧には150億ユーロ(1兆8000億円)かかるとの試算もあるようです。YCSも義援金の形で、お見舞いはしましたが、一日も早い復興を祈りたいと思います。

クロスター教会で、日本の合唱団が再度の演奏
横浜合唱協会が土曜のコンサートに出演する

タールビュルゲル発

著名な日本の合唱団、横浜合唱協会が、1997年以来となる2度目のコンサートをタールビュルゲルで開催する。同合唱団は、すでにライプツィヒのトーマス教会と、アンナベルク・ブーフホルツでの演奏会をすませ、8月17日午後8時からクロスター教会で、演奏会を行う。

今回演奏されるのは、J.S.Bachの モテット"Lobet den Herrn alle Heiden"と"Der Geist hilft unserer Schwachheit auf"、Felix Mendelssohn Bartholdyの"Warum toben die Heiden"と"Richte mich Gott"およびMax Regerの"8っの宗教合唱曲作品138"である。さらに、八尋和美氏の指揮で、林光(1931年生まれ)による日本叙情曲集も演奏される。この合唱団は、すでに高い評価を得ているが、2000年のBachjahrには、トーマス教会カントールのG.Chr.Biller教授の協力のもと、日本におけるバッハ音楽の普及のために大きな役割を果たした。

Eisenberg und Umgebung 2002年8月15日

音楽世界から
魅力的な響きの体験タールビュルゲルに日本からの合唱団

ハンスレーマン記

タールビュルゲル発

横浜合唱協会が再びタールビュルゲルにて客演。この合唱団のJ.S.バッハに対する心からの強い想いはモテット2曲に歌われていたが、Lobet den Herrn alle Heidenでは伴奏をオルガンではなく弦楽器にしてもよかったかもしれない。このことで合唱の構造が隠れてしまったのは残念である。幸いDer Geist hilft unser Schwachheit aufはアカペラで演奏され、先述の合唱構造が明確に表現されていた。輝くようなソプラノ、響き豊かなベース、均質な内声、それらのアンサンブルが幅の広いスペクトルによって表現を一層多彩にしていた。さらにドイツ語を外国語とする合唱団員の言葉と音の処理は敬意に値する。ポリフォニックな音の流れの中で興味深いリズミカルなアクセントを生んでいた。レーガーの8つの宗教曲はたっぷりと聞かせてくれた。ともすればpでのダイナミックさが少し欠けていたか。メンデルスゾーンのモテット2曲はドラマチックな言葉の運びと魅惑的な和声に恵まれ第一部のハイライトであった。

第二部は日本の作品。林光編曲で伴奏付きのものと無伴奏作品があり、西洋音楽と東洋旋法を感じさせた。一方、お国特有の衣装に着替えた小休憩の後ではまさに日本の色が燦然と輝いた。柴田南雄(1916-1996)作曲の追分節考は盛りだくさんで贅沢な合唱曲で、日本における働く姿が様々な形で歌われている。女声の連続したクラスターと男声のメロディックな掛け声が教会全体に響き渡り、魅了的な美しさを生んでいた。その空間内を男声メンバーは三々五々に歩き回り、さらにそこには尺八の音色が加わったのである。

古い民謡の新しい形、合唱によるまったくの偶然性 …指揮者に組み合わせの自由が与えられている。何よりも、あらゆる部分に遙かかなた東洋の瞑想精神が漂い、それはこの場にあってはまさにベネディクト派修道士たちのグレゴリア聖歌と近いものさえ感じさせもした。少なくともその効果という点ではまさにそうであろう。八尋和美指揮の客人たちと谷口明子(ピアニスト/オルガン)は人を楽しませる方法を知っており、聴衆は彼らとは別れがたかった様子。聴衆に対する感謝としてのアンコールのなかで、尺八奏者関一郎の作品が鼓奏者の歌と共に演奏された。

2002年8月20日
テューリンゲン ランデスツァイトゥング 地方版

日本の合唱団とバッハの作品
タールビュルゲル クロースター教会で横浜合唱協会が聴衆を魅了

ミュラーシュミート記

タールビュルゲル クロースター教会でプログラムを飾る作品となった最後の作品は聴衆にとって興奮に値する以上のものであった : それは、中部日本 信濃追分付近の民謡をアカペラ ジングシュピールの形でオリジナル演奏した作品である。

かつて、車もなく道路も整備されていない時代、山地では馬が移動の手段であった。荷物や人々をのせた馬を引く馬子たちの歌は多数存在したようだがすべてが書き留められていたわけではない。今日でもなおそれは伝承され歌い継がれている。今回の演奏作品についても楽譜があるというわけではない。指揮者が演出家であり、彼がキューを出す。合唱団の女性たちはステージに立ち、合図を出す。最後列の女性が扇子を持ち演出家の指示に従って高く掲げる。それが男声の歌い出しのきっかけを作る。彼らは馬子となってバジリカの中を一人でまたは数名で歩き回り、独特の民謡を歌う。女声合唱は手当たり次第とさえ言えるような、多声の響き、雰囲気を作り出す現代的なクラスター。終わろうとしない拍手に応えて抜粋でアンコール。

演奏会の第一部はバッハ、レーガー、メンデルスゾーンの作品。八尋和美指揮で約60名の合唱団員はそれらの作品をドイツ語で、まるで母国語のように歌った。一曲目のバッハのモテットLobet den Herrn alle Heidenではアプローチが今ひとつまとまらなかったが、それは合唱団に原因があるのでない! 平衡なオルガンの響きと強弱を学んだ合唱との架け橋になるものが無かった。オルガンの絶え間ないフォルテの音色が美しい合唱をかき消してしまい、モテットを不本意にも合唱付き器楽曲にしてしまった。さらに不揃いも目立った。ここまでで、聞く側の失望に終止符が打たれたのは幸いなことだった。その後アカペラ演奏が続き、紛れもない最高の演奏を聴くことができた。マックスレーガーの8つの宗教曲はドイツの合唱団では抜粋で歌うことが多い中、全曲演奏は最高の楽しみ。 指揮者八尋和美の指揮は全体に大振りな動きがなく、団員の集中力を一身に受けている。メンデルスゾーンのドッペルコーラスは、研ぎ澄まされたダイナミックな表現力で歌われた。

締めくくりのDer Geist hilft unser Schwachheit aufは聴衆を存分に楽しませてくれた。合唱団のまったく自然な内面の緊張が緩やかで柔軟な演奏を生み出し、 Der aber ・・・のフーガのあと、合唱団も聴衆も演奏会の成果に満足感があふれ、明るい喜びの歌声が響き渡っていた。

2002年8月22日付
オストテューリンガー ツァイトゥング 地方版

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